星新一氏の小説を思い出す。
以前にも記載したネタかもしれないが、世にも奇妙な物語のストーリーにもなった話だ。
そのタイトルは「おーい、でてこい」だ
あらすじとしてはこんな話だった。
台風が過ぎさった翌日、ある村にとても深く大きな穴が見つかった。
穴の底は暗くて見えず、村人が小石を投げ入れてみたり、キツネの巣だと思った若者が「おーい、でてこーい」と叫んでみたりしたけれど、何の反応もなかった。
穴はどこまでも続いているらしく、科学者や新聞記者やらが調査に来ても誰にも深さは分からない。
そこで、その穴の利権を買った利権屋が何でも捨てる事の出来るゴミ処理場としてその穴を使うことにした。
そこには放射物質や伝染病の実験動物、身寄りのない無縁仏などが投げ入れられた。
時が過ぎ、そのゴミ処理場に立派なビルが建てはじめられた頃、ビルの工事作業員が休憩中に頭上の方で「おーい、でてこい」と叫ぶ声が聞こえてきた。
工事作業員は気づかなかったが、その横を小石が落ちていったという話
そう当然と言えば当然なんだけれども、因果応報はタイムラグと共に忘れた頃にやってくる。
もう30年近く前になるんじゃないだろうか。
俺は「不良」に対しての憧憬はなかったので、比較的真面目に生きていたと思う。
いや、自己保身の言葉になってしまうから正確には違うな。
正確には何もしなかったので面倒ごとに巻き込まれたくなく、おとなしくしていた。
しかし、やはり高校生くらいの男子は精神的な幼さを多分に持ち合わせており、たまによくない悪戯をしたりした。
今でも忘れない、満員電車でのことだ。
通学するためにJR線に乗っていた俺は目の前の衝動に抗えないでいた。
今思えば、幼すぎて視点が自己中心的で本当に他者という視点が抜け落ちていたと思う。
面白がりたい欲求は今でも分からなくはないが、それは他者を貶めて得るべきものではない。
とんねるずの番組で「イジメ芸」と呼ばれていたネタと同じかもしれない。
誰かの犠牲の上で成り立つ「面白さ」は決して歓迎されるべきものであってはならないと今なら思うのだ。
ただ当時はそんなことも分からず、最近で言えばスシローの醤油差しペロペロ迷惑男のように、「なんでそんなことするの?」ということをやってしまうほどお子様だった。
今は許さない社会なので、即レスで因果応報のブーメランが倍返しで戻ってくるけれども。
ただ30年程前はまだ寛容な社会で、その投げたブーメランはゆっくりと戻ってくるものだった。
四半世紀返しの因果応報とでも言おうか。
当時の事だ、人気の玩具に「バーコードバトラー」というおもちゃがあった。
いろんな商品などについているバーコードを読み込むと強さが数字で出て、友達と対戦できてその強さを競うというものだった。
最強のバーコードは何かが追求されていた時代だと思う。
そんな中、丁度初夏の時期だったと記憶している
通学していた俺の目の前に強そうなバーコードだなと思ったバーコードがあったのだ。
これを読み込んでいしまいたい。
そして友人と対戦したい
そう思ったけれども、バーコードバトラーは高校生にもなって学校にもっていくような物でもなく、どうせ手に入らないのであれば、他の誰の手にも渡したくないと思ってしまった
石川さゆりの「天城越え」の歌詞ではないが、誰かに盗られるくらいならその存在の消滅を願うようなものだった。
幼すぎた俺はその存在の消滅を実行に移してしまったのだ。
目の前に俺の身長よりも低い、いわゆる「おじさん」が立ってた。
そしてそのおじさんはおそらく望まぬ結果とは言え、いわゆる「バーコードヘアー」と呼ばれる髪型をしていた。
当事者になっていないので、その心理も分からないし、かといってその本人の意志を踏みにじるような真似は決して許されることではないのだけれども、幼すぎて無邪気に自分の面白さの優先を選択してしまった俺は、その誰にも渡したくないバーコードの消滅を実行に移した。
当時の夏の電車はエアコンというよりも扇風機がメインで車内の温度調整がなされていた。
だからバレやしない
そう思い、後姿のおじさんの髪の流れる先に俺はラーメンを冷ますかのように「フーフー」息を吹きかけてしまったのだ。
いざとなれば扇風機の方を見て扇風機の風のせいにしてしまえばいいのだ。
フワッと舞い上がる「長髪?」は帰巣本能のままに巣に帰る鳥のように、その根元へと戻っていった。
まるでスイカの黒い縦縞がペりぺりと剝がされたかのように、バーコードの横縞は一掃され地肌の色の一色となった。
麻雀で言えば、スイカの黒い縦縞が無くなれば緑一色になるんだからリューイーソーで役満だなとか今ふと思った。
その瞬間
振り向いたオジサンは俺の方を悲しそうな顔で見つめてきた
「なんでそんなことをするの?」
無言ではあるのだけれども、その瞳は強くそう訴えかけてきた。
幼すぎて人の気持ちを察することができなかったとはいえ、その目に宿る深い哀しみは俺をいたたまれない気持ちにさせるには十分だった。
なんでこんなことをやってしまったんだろう。
自己保身精神が未成年だからとか、誰かに奪われるくらいならとか理由にならない自己都合の単語を次々と脳裏に浮かべる。
そして、オジサンは再び無言で正面を向きなおすと哀愁をたたえた背中で次の駅で降りていった。
もしかしたら本来降りる駅ではなかったかもしれない。
そのまま出社するわけにはいかなくなって降りたのかもしれない。
そんな俺がやってしまった「なんでそんなことをするの?」が時空を超えて、意外な場所で意外な相手から自らの身に戻ってきた。
昨日の事だった。
折角の土曜日にもかかわらず、梅雨でもないのに雨が降り続いている。
先週南警察署に「道路使用許可」を取りに行ったため、土曜日の夜から再びお店の集客用の「ポケットティッシュ」を配る事にした。
前回手伝ってくれた友人の営業が今日も手伝ってくれるという。
先日も県会議員のビラ配りをその友人に一緒に手伝ってもらい、朝に他の方の4人でどうにか70枚配布をしたものを、二人で用意された150枚を全部配布しきったのだ。
その時に県会議員がこうビラを配布してくれと言われて学んだのが、ただポケットティッシュを配るだけではなく、店名を言って少しでも印象を残すように渡すのが最終的に効果があるという事だった。
なので、店名を言いながら渡すと、居酒屋の出口で出てくる客に狙いを絞っていたのだけれども、30年以上生き残っていた実績はウチの店を「知ってる」という反応を受け、「今度行くよ」という言葉を貰ったり、他のお客さんもほしいらしいからとわざわざ取りに来てくれたりして効果を感じていた。
多分、フェイストゥフェイスなので顔の見えないチラシよりもこっちの方が効果が高いし、費用も安い。
そんな雨の中、居酒屋から出て反対方向に出ていく客を追いかけてティッシュを渡しにいった時の事だった。
なんとか渡すことができ、台車とポケットティッシュが入っている段ボールのところを振り返るとそこに「因果応報の使者」がいた。
個人的に好きな犬種のコーギーが飼い主さんとお散歩中だったのだが、リードに余裕を持たせており、私の持って来た台車とポケットティッシュの入った段ボール箱に興味津々だったコーギーは匂いをクンクンと嗅いでいた。
おお、なんか可愛いなと思っていた。
しかし、その瞬間に俺は衝撃的な映像を目撃することになる。
コーギーは私の持って来たポケットティッシュの入っている段ボールに向かい、後ろ右足を上げたのだ
どうやら「おしっこ」をして俺の持って来たポケットティッシュの段ボール箱にマーキングするつもりなのだ。
やめろっ!!
やめてくれっ!!
そのティッシュには俺の「夢と希望と費用と仕事」が全部詰まっているんだ!!
獣の匂いのつくおしっこなんかかけないでくれ!
頼む、やめてくれっ!!
なんでそんなことするんだ?
急に脳内にフラッシュバック映像が流れる
「なんでそんなことするの?」
無言で悲しい目で訴えかけてきたオジサンの顔が思い浮かぶ
実際には一言も声は発せられる事はなかったが、脳内でスローモーションで声が聞こえる
「ナ・ン・デ・ソ・ン・ナ・コ・ト・ス・ル・ノ?」
刹那、理解した。
ポプテピピックよりも完全に理解した
そうか、これは因果応報で自業自得なのだ。
まさかその結果を告げる使者が人ではなく、お犬様だったとは・・・・
そして四半世紀も経過してからの物だったとは
まあ、飼い主さんがリードを引っ張ってくれたおかげでマーキングはされずに済んだのだけれども
「なんでそんなことするの?」
という単語でかつての幼さの犯した過ちを思い出させられた。
そう誰かに聞かれてしまうような事はしちゃいけないよね。
そして昨日はありがたかったのだが、過去に配ったポケットティッシュを見てきてくれた初のお客さんがいたらしいのだ。
俺自身も努力が報われる世界であってほしいという俺自身の願望のため、誰かの頑張りに結果がでたと伝えるために営業されたら行くことも結構あるけれども、行動が無駄じゃないという証明は何よりもありがたい。
行動は可能性もたらせると再認識する事も出来たし。
まだ1週間道路使用許可を取っているので今週も隙あらば配りたいと思っている。
できれば晴れた日がいいな。
さて、そんなわけで画像はリピート店ばかり
白金高輪でまた仕事があったのでふらりと入って美味しかった寿司屋の炙りトロ・ブリ丼
ここの酢飯好きなんだよな。
もう4回目くらいのリピートかもしれない。
そして炙りトロも美味しい。
もう一つは道路使用許可取りに行った時にある弘明寺の「いなせ寿司」の画像。
そして最後のはいつもの「花びし」で満席で2連敗した後に行ったもう一つの絶品海鮮居酒屋「たか」の刺し盛
魚ばかりだけれども、年齢かな
最近魚が一番美味い。
来週は何を食してやろうかと今から営業先周辺の飲食店ランキングを眺めている
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