驕れる者は久しからずと言えば琵琶法師で有名な平家物語の一節
昔の怪談でよく「耳なし芳一」が琵琶を弾きながら演じるやつだ。
盛者必衰(じょうしゃひっすい)の理の方が個人的に記憶に残るけれども。
大体、いろんな武将の逸話として「驕れる者は久しからず」と自宅の壁などに落首を書かれると、「おごらざる者も又久しからず」と返す逸話が多い。
豊臣秀吉とか太田道灌とか蒲生氏郷とか、有名な武将の共通の逸話みたいにされている
簡単に要約してしまえば、高慢になっている者はその繁栄が長く続くものではないという戒めなんだけれども。
ちょっと前にそれを思わされたことがあった。
要は油断だな。
徳川家康はかつて勝って兜の緒を閉めよと言葉を残したが、すべてにおいて油断や驕りが思わぬ高転びをもたらせる。
「この漫画が凄い」に出ていて最近俺もハマっている「葬送のフリーレン」という漫画でもそうだが、油断や驕りを相手に持たせることで戦いを勝ち抜いてきたという描写があるが、理に適っているなとか思うものな。
例えば、実際の歴史でも織田信長は「うつけ」と呼ばれて幼少の頃は馬鹿だったなんてエピソードが残っているが、とんでもない。
幼少の頃から、優秀な今川義元がいつか必ず攻めてくることが分かっていたから、真っ向勝負したら勝ち目がないので、その優秀な武将を油断させるため、「うつけ」と呼ばれて噂になるような行為を子供の頃から繰り返し、自分の能力を誤認させ、その驕りに付け込んで奇襲で桶狭間の戦いで勝ったのだ。
魔力を抑えて魔族に強さを誤認させる「葬送のフリーレン」とまったく同じではないか。
と同様だと俺が思う逸話に孫臏(そんぴん)の李代桃僵(りだいとうきょう)という言葉がある
孫臏といえば、孫武(孫子)の孫とされており、現代でも経営者のバイブルと呼ばれる「孫子の兵法書」を書いたのは孫武か孫臏かと言われている。
そして李代桃僵(りだいとうきょう)とは、桃(高い価値がある果実)の木を守るために、李(桃より価値が低い果実)の木が倒れる事を指し、損害を受けざるを得ないときには、不要な部分を犠牲にして、全体の被害を少なく抑えつつ勝利するように図る戦術のことを言う
記載する物語によって違うのだけれども、孫臏が斉の国の田忌に仕えたとき、斉の国の国王である威王が主催する競馬大会が開かれていた。
そして、田忌と威王にはそれぞれ上・中・下の三種類の馬がいた。
威王の上の馬は圧倒的に強く、どの馬も威王の上の馬には敵わなかった。
圧倒的強さを誇る馬を持つ威王は絶対的自信を持っており、負けるはずがないと思っていた
そしてその自慢の馬を最初に披露して皆の度肝を抜きたいと考えていた威王は一番強い馬を最初に走らせる情報を漏らしてしまい、その他の出走させる馬の順番も公表してしまう。
これも大きな油断で驕りだ。
これを聞いた孫臏は威王の上・中・下の馬に対して下・上・中の順番で当てるように田忌へ献策した。
その結果最初の一頭は大きな差で大敗し、それに気を良くした威王は勝ちを確信していた。
ところが、残りの二頭は威王の馬に勝ったので勝負は田忌の勝ちとなった。
有利だった勝負を油断で負けてしまった典型的な話だなと思うのだ。
また脱線してしまうのだけれども、漫画にもなっている孫臏の逸話も面白い。
まだ孫臏が若いころ、龐涓(ほうけん)という人物と一緒に学んでいた。
この龐涓は魏の国に仕官して、恵王の元で将軍になることができた。
ところが龐涓は孫臏に自分が能力で及ばず勝てない事を理解していた。
そのため、いずれ孫臏が違う国で王に仕える事があれば自分が滅ぶことになるとずっと恐れを抱いていたのだ。
そこで、龐涓は偽って孫臏を魏へと招待し、孫臏を騙して罪に陥れ、臏刑(両脚を切断する刑)と額に罪人の印である黥を入れる刑に処した。
自分より優秀な者を消してしまえば自分が一番優秀だという発想だ。
けれども、結果的には中途半端なのだよな。
生かしておいたら意趣返しに合う可能性がある。
仕留めるなら絶対にしないと・・・
にしても孫臏からすれば信じられない話だよな、普通に悪意なく生きていただけのに自分より優秀だからと能力を過去に見せただけで友人だった人物に両足を斧で斬られてしまうような事があるのだから。
その後の孫臏は軟禁状態にあったが、斉の公族である将軍田忌が使者として魏へとやってきた際に密かに連絡を取り、その出立に合わせ車の中に隠れて魏を脱出することに成功した。
そして、その十数年後、龐涓の軍勢と戦う事になった孫臏は龐涓の「龐涓の兵は命知らずの猛者だが、孫臏の兵は臆病者だ」という驕りを逆手に取り、退却戦で自軍の陣営の竈の数を前の日の半分、次の日は更に半分という具合に減らしていき、あたかも自軍に連日脱走兵が相次いでいるかのように偽装した。
龐涓はこの様子を見て勝利を確信し、本来なら最前列に置くべき歩兵をあえて後にし、自ら足の速い精鋭の騎馬隊を率いて一刻も早く孫臏軍を追撃しようと急いだ。
一方、孫臏は龐涓の部隊が日暮れに到達するであろう場所に木で障害物をつくり、馬で通れなくしておいて、側の木の枝に板を吊るして「龐涓この樹の下にて死せん」と書き記させた。
そしてその道の両側に1万の兵を伏し、兵たちに「日没のあと此処に火がともるであろうから、それに向かって矢を射よ」と命じた。
夜半になって当地に龐涓が到着した。
障害物に馬を止めさせられた際、なにやら書かれている板があると兵が言ったため、自らこれを読もうと松明の火をかかげた。
これに孫臏軍の伏兵が一斉に矢を放ち、「龐涓この樹の下にて死せん」と見た後に矢を射かけられたことで、自らが負けたことを悟った龐涓はハリネズミとなり戦死した。
これも油断と驕りだよなと思わされるのだ。
と、長くなってしまったが「これは驕りだな」と感じた事が最近あったんだよな。
仕事で静岡県静岡市に行った時のこと
折角静岡に来たからにはと「うなぎ」を食してやろうと思っていた。
その時の鰻が画像の鰻だ。
本当は浜松なんだろうけれども、隣の市ならそれなりの物があるだろうと。
渋滞を懸念して早めに自宅を出た俺は商談まで1時間10分ある時刻は午前10時50分
商談の後食べた方がゆっくり探せるが、1時間もあるなら食べてから商談だなと思っていた。
そして商談の歯科医院より遠くなくてよさげなところをネットで検索していた。
すると、「活ウナギ橋本」というところが安くて美味しそうに見える。
俺はドリフト気味にハンドルを回すと、その店に向かった。
到着すると時刻は丁度11時
予約はしなかったが開店と同時なのですぐに座れた。
うなぎなら10分もあれば食べれるだろうと思っていた。
ところが、待てど暮らせどなかなか出てこない。
いや、俺の後のお客さんには30分待ちとか言っていたけど、俺には言わなかったよね?
なのに、こんなにかかる?
鰻だから仕方がないかもしれないけど、ちょっと時計をちらちら見ながら待っていた。
その間にも予約なしのお客さんがきたり、無視されっぱなしの電話が鳴りやまない。
繁盛しているんだなと思わされた。
だが、鳴っている電話を無視して従業員の中年女性たちが雑談して笑っている。
いやさ、お客さんからの電話鳴っているよ?
そして大将は一人忙しそうに指示を出し、鰻を焼いているが、そのスタッフの中年女性たちは慣れきっているのかもっさりとした動きで、客なんか待たせておけばいいじゃないという雰囲気と行動。
ああ、驕り、慢心しているなと思わされた。
どうせ、客ならいくらでもいるし、客が待つのは当たり前でいつもの事、急いでいるとか客の都合は関係なく、時間がないなら来なきゃいいのにという雰囲気
俺の鰻が上がってもマイペースで大分待たされる。
お椀とお新香を盆に載せるのにどんだけ時間がかかってんだよ・・・
最初から大繁盛していたわけではないと思うのだけれども、並んで混んで繁盛するのが当たり前になっている。
驕れるものは久しからずだなと思わされたのだ。
ネットなどの評判でしばらくは大丈夫だろうけれども、こういうのは大分後になって効いてくる。
油断や驕りは駄目だなと改めて思わされた。
「おおたなわのれん」の牛鍋とか「洋食キムラ」のハンバーグが典型的な例で、驕れる仲居や女将の行動の結果、最近の凋落ぶりが凄まじいしな。
そして肝心の鰻の方だが、画像のように「特上の極め重」というのを頼んだ。
かば焼き、白焼き、かば焼きで挟まれている「うな重」
これで4000円なら最近の鰻の価格からすれば安い方に思える。
もちろん、うなぎが不味いはずはないので美味しかったのだけれども、「うな重」自体は自分がいつもリピートしている元町にある「濱新」の方が個人的には美味いと感じた。
白焼きはほぼ初に近いんだけれども、塩を振ると甘いのね。
これはこれで美味しいが、やはりタレをつけた方が俺好みだ。
でも本来なら静岡まで来たら、関西風の蒸しがない弾力が肉肉しい鰻に再度トライしたかったのだけれども、時間がなかったので関東風の蒸しありの鰻で仕方がない状況。
次回いくときは関西風の焼きオンリーの鰻だな。
そして思ったより待たされたため、店を出るころには商談の時間に5分くらい遅刻する事が確定していた。
なので、その場で歯科医院に電話をし、渋滞で5分くらい遅れますと連絡をした。
そうしたら、鰻の香りをぷんぷんさせていたのがバレたのか、帰り際に渋滞気を付けてくださいねと笑われながら言われてしまった・・・
鰻喰って渋滞でとか連絡して、5分くらい遅刻してくる営業マンってちょっとだけ可愛いくない?
まあ最近絞っていないから、うなぎ食べたそうな顔と腹してるから仕方ないなと思われたのかもしれないが。
それでも一発で契約の内示を貰ったから結果的にはいいんだけどね。
ただ、「驕りダメ絶対」と思わされたネタだ。
でもって、もう一つも商談で鴨居に行った時の事。
個人的に最強のラーメンだと思っている相模原の貝ガラ屋のカキソバにインスパイアされたという店で貝夢というカキラーメンの店がある。
前に通りかかった時も気になっていたので、丁度良かったとその日の商談の前に寄った。
すると、内装に問題があるのか、天井からいろんなところに雨漏りのような水滴が降ってくるんだよな。
原因は店内のラーメンのスープによる湿度だと思うんだけど、換気が悪いのか。
ただ、これラーメンに水滴落ちて来て入ったら嫌だなと本気で思わされる。
肝心のお味は普通に美味しいが、やはり似せているだけなので貝ガラ屋の後味には遠く及ばないと思わされてしまった。
違うんだよな、美味いラーメンは最初は濃厚で単調な味であれっ?って思うんだけれども、後から後味が変わってしみじみと美味いなと思わされるので、最初から最後まで後味が変わらない物は普通に美味しいを超えられない。
このカキソバのインスパイアラーメンも見た目と最初の一口は同じだったけれども、似て非なるものだなと思わされた。
本当に知れば知るほど奥が深いのが食だよな。
極めることはできないし、オリンピックと一緒でわずかな差で価格が3倍くらい違う事もザラだし
食道楽は金がかかると昔から言われている。
それでも、食道楽は楽しいもんな。
子供の頃は理解できなかったけれども。
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