下北沢黒川食堂ランチ

営業マン飯2022年
ご挨拶

こんにちわ、地下鉄吉野町駅最寄りのカラオケBARキャビーヌの中島です。

 

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こんにちわ。

地下鉄吉野町駅近くのカラオケスナック「ミュージックパブキャビーヌ」店長の中島です。

人間は毒が好きだ。

毒舌芸人がもてはやされるように、刺激のある毒を求めたがるのだ

化学調味料や酒や煙草も砂糖なんかも普通に考えれば毒だよなと思う。

けれども、我々は毒でもその刺激が美味いと思えば好んで求めてしまう。

そういう生き物なんだよな。

先日は下北沢で仕事だった。

学生時代はよく通った駅なのだけれども、折角渋谷から井の頭線で下北沢を通る定期券を持っていたのにも関わらず、まるで寄り道下車をすることもなく、何のためにわざわざ都内の大学への進学を選択したのかと今思うと勿体ない。

安酒でもいいから夜の下北沢で学校帰りに飲むところとか見つけていれば、また今持っている選択肢とは違った選択肢を手にしていたのかもしれないよなと。

当時はそんなこと露ほども思わなかったけれども。

なので訪問先から社に戻る前にいつも通り、何かいいランチはないかを検索していると黒川食堂という店をみつけた。

サラダの食べ放題があるらしい。

肉体的にはなるべくサラダとかたくさん食べたほうがいいんだよな。

糖質カットにもなるし。

そう思った俺は農民が目利きしたという野菜をメインとした食事もたまにはいいと思ったのだ。

そこで黒川定食というハンバーグとサーモンのマリネ?とチキン南蛮と骨付きチキンがついたランチをライス無しで注文。

味噌汁とサラダバーはお代わり自由らしい。

野菜を推しているだけあって、全般的に体に良さそうな優しい味わい。

ちゃんと美味しい、ちゃんとしたご飯

そんな感じがしたが、健康管理を徹底している人なら最高のご飯だろうなと思ったのだ。

しかし、こちらは美食を求める冒険者

平和なだけでは刺激が足りないのだ。

そこで冒頭の言葉を思い出したのだ。

人間は毒が好きなんだよと。

もともと、刺激を好む俺はホラー系の書籍が好きだった。

安全の約束されたスリルとでも言おうか。

今でも、普通に怖いと思えるレベルの話は映画にもなった小説ダイナーの作者平山夢明氏のホラー本だけだなと思うのだけれども。

その平山夢明氏の本の中に「終末ラーメン」という話があったのを思い出したのだ。

その話はこうだ。

叔父のラーメン屋にアルバイトに行っていた青年がいた。

そこでは常連中の常連客はラーメン店主の叔父とツーショットの写真を撮影し壁に張られているのだ。

ある日アルバイトに来た青年は、そこに真新しい叔父とのツーショット写真を見つける。

写真にはちょっと前まで毎日ラーメンを食べに来て、会話をするようになり、青年と仲が良くなった客が写っていた。

そういえば、最近この仲良くなったお客さんを見かけないなと思い、叔父に尋ねた。

すると、ああ亡くなったよと回答され驚く

まだ若いのにと。

すると、その隣にも以前は見かけたのに、最近は見かなくなった客と叔父のツーショットを見かけた。

そういえば、この人も最近見かけないと叔父に問うと、そいつも死んだよと衝撃的な回答が。

叔父の作るラーメンとは、科学調味料たっぷりのスープに豚の脂が1センチほど膜を造って浮いている。

そのために冬場でもさほど湯気が立たない。

冷めているのではない、湯気を脂の膜が包んでしまうので立ちにくくなっているのだ。

サンマーメンのような原理だろう。

それに常連の客は一様にニンニク、こしょうを鼻が曲がるほどブチ込んで汗をダラダラ垂らして飲み込んでいく。

叔父はこういった

「ウチみてえな高カロリー、高蛋白、食塩過多、科学調味料過多のラーメン、週に四回も五回も喰ってみろ。尻からラードがでるぜ」

「だから俺は脂肪肝になって体に蕁麻疹が出ても、懲りずに喰いにき続ける奴は写真に残す事にしてる」

「そして、俺が写真を残した奴は全員死んでいる。」

「昔は俺も体に良いラーメンを作ろうと頑張っていた。だが、どんなに体にいいラーメンを作っても、誰も食いたがらねえんだ。」

「売り上げが立たず、追いつめられた俺は開き直って、真逆のラーメンを作るようにしたんだよ。」

「東京ってとこはそういう味じゃないと商売にならねえんだ。味にヒステリーがないと売れねぇ。結局、毒じゃなきゃ旨いって言わねえんだ。変なとこだよココは。旨い旨いって銭払ってまで毒喰いたがる奴がウジャウジャいるんだ」

「不思議な事に、頭のいい奴に多いんだよなあ。ああいうの。きっと勉強ばっかで母ちゃんがちゃんとした飯喰わせてなかったんだろうな」

そして最後に、叔父はこう言ったそうだ。

「外食してもラーメンだけはよせよ」と。

この話を思い出すたびに思うのだけれども、御多分に漏れず、俺も毒が好きなのかもしれない。

酒毒という言葉がある通り、酒は百薬の長なんて言うけれども、それは精神的なストレス発散的な部分であって酒自体も毒でしかない。

そんな毒を毎日薄めて飲んでいるのだから、俺も毒の刺激が好きなんだなと思えてしまうのだ。

なので、明らかに健康的で体に良い物に刺激を感じなくなっているのかもしれない。

ただ、良い食事をしたなとは思えたが、物足りなさは毒がないからなんだろうな。

でもって本日、杉田で仕事に行ってきた俺は昼は何にするかなとさっと検索すると、なんだか古めかしい食堂が結構評価されていて、これにしようかななんて思っていた。

ところが、まだ6月だというのに30度を超える気温の中、場所を調べて汗だくで行くのが面倒になってしまい、駅の近くなら何かしらあるだろうと周辺で感性に訴えかけてくるところでランチにしようなんて思っていた。

ところが、仕事先から駅に向かっているとその検索した高評価の食堂の名前を見つけた。

ただ見るからに、限界集落にかつてはあった食堂かと思えるくらい廃墟感のある作りの看板と建物。

営業はしているようだが、事前情報がなければ絶対に入ることはない外観だった。

まあそれでも、町の食堂で人気ならトライしてみるべきだなと入ると、店内は昔の寮とか工場の食堂のような昭和感あふれる構造

何にしようかとメニューを見ていると、どうも中華と和の食堂の合同体といわんばかりのラインナップでチャーハンとラーメンと冷やし中華があるのに、生姜焼きとか刺身定食とかもあるのだ。

メニューが多彩すぎて逆に大丈夫かと思える多品種のメニュー

そんな中、まあ野菜だなと思い肉野菜定食のライス少な目を頼むことにした。

どうも、この新杉田駅の近くにある食堂「さかえや」は早朝6時くらいからやっており、夜勤明けの運転手とかが朝っぱらからダラダラと飲んでいるらしい。

逆に昼飯時はそんなに混んでいなかったんだが、朝とかの方がより混んでいるようだ。

不思議な空間だなと思いながらも、俺は肉野菜炒めがでてくるのを待っていた。

そしてトレイに載せられやってきた、冷ややっこと味噌汁と漬物と少量ライスと肉野菜炒め。

やはり和のテイストなのだろう漬物の塩っぽさが半端なく、これは塩分過多だなと思えるほど漬物はしょっぱい漬物だった。

メインの肉野菜を後回しにし、冷ややっこと味噌汁に手を付ける。

味噌汁は丁度良いくらいに塩加減で美味しいし、冷ややっこは固めの豆腐が冷えていて箸が進む。

そして、いよいよと肉野菜炒めに箸を伸ばす。

正直、あまり期待していなかった。

野菜炒めにそんなに差がつくとは思えないし、メニューが豊富すぎて一つ一つにそんなに手をかけられないだろうと。

そんな俺の驕りは見事に打ち砕かれた。

和のテイストが強いため、塩味が強いなと一瞬思うのだが、すぐに慣れて、肉と野菜の甘味がやってくる。

あれ、肉野菜炒めってこんなに美味かったっけ?

ちょっと衝撃的だった、そんなに差はつかないと思っていた野菜炒めがなんか異常なまでに美味い。

野菜炒めだけ食べようとすると、どうしても日高屋とかバーミアンとかチェーン店に頼りがちになってしまう。

そして当然美味しいんだけれども、それはリピートしたいと思えるほどではなく消去法で選択している野菜炒めだ。

ところが、ここの「さかえや」の野菜炒めはもう一度食べたいと思うほど後味の野菜と肉の甘味が美味さを感じさせる、

ここで飲みたいな。

野菜炒めとか、刺身とか、他のメニューも注文し、つまみにして。

「外観とか見た目で侮るな」

そう咎められた気がした。

いや、野菜炒めでこのレベルなら他も物凄く美味いんじゃないか?

ちょっとここはいつか飲みに行こうと決めた。

俺が濃厚な味好きなのとマッチしたのもあるし、野菜不足で体が求めていたのもあるかもしれないが、後味が変わる料理を作れるのは腕があると思うのだ。

多分、子供の頃の野菜炒めはこんな味だったと思うし、最近チェーン店等で味わうことのできない感じの野菜炒めだった。

まるで、滅亡したと言われている古代生物が生きていたのを発見したかのような気分だ。

シーラカンスは滅亡してなんかいなかったと。

ネス湖でネッシーのような古代竜を捏造じゃなくて、本当に遭遇したかのようなこの感覚。

ここは必ずリピートしたい。

そう固く誓わされた。

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