こんにちわ。
地下鉄吉野町駅近くのカラオケスナック「ミュージックパブキャビーヌ」店長の中島です。
アリスが迷い込んだのは不思議の国だったかもしれないが、俺が迷い込んだ世界は違うようだった。
時はモーレツ社員、いわゆる企業戦士と呼ばれる男達がしのぎを削っていたあの時代。
兵者(つわもの)どもが夢の跡。
全く関係ないけれども、そんなフレーズが脳を駆け抜ける。
漫画サザエさんを実写化し、マスオさんがモーレツ社員となって自分の結果を変える事ができる人々(上司)を夜に接待し、家庭を顧みていないドラマの世界のような光景。
新宿の雑居ビルの4階にその店はあった。
イメージとしては西部劇などでタンブルウィード(風で転がっていく枯れて丸まった草)が集団暴走しているようなゴーストタウンを思わせる古めかしいビルの入り口
昭和に何か言いたいことでもあるのかと言わんばかりに自己主張が強い引き戸を開けると、令和というトンネルから昭和の世界に舞い戻った感覚にさせられる。
和食の店らしいカウンターに座ると最初から小鉢が4つ
お銚子片手に、ツワモノ(おっさん)どもがそれぞれの人生哲学を語るのが最も絵になるような雰囲気だった。
翌日には変わらぬ大人の対応の日常が戻るのだけれども、その刹那だけは熱弁を振るって何かを忘却したいというか、仕事の方向性の折り合いをつけるのに、納得いかないっすとかいう部下を上司を宥めるのに最適というか。
そんな俺の知る、古き良き元気な昭和がまだ現存していた。
ある意味、世界遺産とでもいうべき史跡と言ってもいいかもしれない。
新橋の地下ビルの飲み屋街のように昭和はもう古いではなく、歴史的価値を持ち出してもいい時代になってきたのではないだろうか。
白川郷のように江戸時代や茅葺屋根が価値を持ち出してきたのなら、昭和のバブル時代の遺構ともいうべき雑居ビルの存在も、その価値を保全するようになってもいいかもしれない。
そんな余計な事を考えながらも、今日は小机で仕事だった。
しかし、小机にそのまま行ってしまうと、ランチ難民になることが目に見えていた。
新横浜駅と「ららぽーと横浜」のある鴨居駅の間に挟まれている駅なのに、駅の外には商業施設はほぼ何もない。
かといって小机の仕事を終えた後だと、ランチタイムは終わってしまっており、これまたランチ難民となる。
だからランチを摂ってから小机に行く必要があった。
最初は再びオストレアのカキフライ食べ放題にしようかと思っていた。
しかし、オストレアのランチの始まりが11時半
仕事の時間に間に合わなくなる。
仕方がなく、妥協案として新橋で食事をしてから小机に向かうことにした。
新橋も飲食店が溢れているため、その砂漠の砂の中から一つのダイヤを見つけ出すような作業が結構難しい。
シャ乱Qのシングルベットの歌詞みたいになってしまっているが、実際にそうだなと思うのだ。
ネットの情報も、情報提供者に金銭的なメリットが提供されている可能性がそれなりにあることを考慮しても、正しい情報を見分ける力が必要になってくる。
経験と感覚を頼りに検索する指をスワイプさせる
そして見つけたのが冒頭に記載した店だ。
店名は「ととや」
魚を幼児語で「とと」と呼ぶ
手を「おてて」と呼ぶのと似ているが。
なので結構魚居酒屋では「魚や」と書いて「ととや」と呼ばせるお店が多い気がする。
メニューを見ると、海鮮チラシが物凄く惹かれたのだけれども、ひそかに完全炭水化物カットをリスタートさせて4日目
2kg減したばかりなのに、ここでその流れを断ち切っては俺の4日の我慢が無駄になる。
追い討ちするように脳内に一青窈のハナミズキのメロディが流れる
僕の我慢がいつか実を結びか・・・
ライスを抜くのでおかずは多めにしなければ、空腹感が暴発しかねない。
なので、刺身付きのギンダラ西京焼きを注文した。
小鉢はいずれも和食なのにも関わらず、塩分控えめというか甘味が強いおかずが多く、優しいお味
どれもちゃんと出汁が取れており美味しい。
最初に出てきた刺身はワサビを溶かした醤油につけて食す。
白身の魚は何だったか不明だが、まあ普通に美味しい。
マグロの中落ちも、これも普通に美味しい。
マグロって差をつけるの難しいのかな。
あまり、いい方にこれは物が違うと感じたマグロってないんだよな。
悪い方には当然あるんだけれども。
もちろん、カマの部分とか部位によっての違いもあり、これ凄いなってマグロを食べたことあるけれども、それは何年も通っている関内の花びしでしか体感した事はない。
一見で行って、すごいマグロって味わったことないんだよな。
だから実はマグロで差をつけるのって難しいんじゃないかという気がしている。
そんなか、ブリと多分カンパチの刺身を口にした時だった。
他の刺身が普通に美味いだったので、それほどは期待していなかったんだけれども、歯応えと甘味が違った。
おや、これは寝かしたりなんだりかしているんだろうなという味。
特にカンパチの方の歯応えに対しての甘味というか旨味が凄く、目利きだけじゃない感じ。
一品でも尖っている物があれば再訪する動機になる。
なるほど、これは人気なのも頷ける。
新橋で飲むと言うと、特に飲むところを知っているわけではなくその場で探す感じだったが、これは次回新橋で飲むときに再訪したいと思えた。
そしてメインのギンダラ西京焼きがやってきた。
西京焼きというとかなり甘いイメージが強い。
味噌汁とか茶碗蒸しとか肉じゃがも甘めだったので、西京焼きも甘いんだろうなと思ったら、これまたいい意味で裏切られた。
ほんのり甘い程度の甘味で脂がのっており、大根おろしに醤油をつけて一緒に食べると大根醤油の強い塩味の後に西京焼きの控えめな甘味で後味が変わる。
この焼き魚美味いな
ほうっとため息が出る。
これはロケーションもあるし、ちょっと値が張りそうっではあるが夜に来て魚祭りしたいなと思えてしまった。
今後、新橋で誘われたら、1度はここにしようと勝手に決め込んだ。
ちょっと違う焼き魚とか煮魚も食べてみたい。
そんな気にさせられる。
完食すると、俺は満足げに頷き、ランチ不毛の地、荒野の小机駅へと向かっていった。
コメント