またもや果たされなかった約束

営業マン飯2024年
ご挨拶

こんにちわ、地下鉄吉野町駅最寄りのカラオケBARキャビーヌの中島です。

 

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戦争映画などでよく見かけるワンシーンが思い浮かぶ

芝居かかった台詞だ。

「母さん、ごめんよ」

交わされた何かの約束を守れなかったのだろう

それは、無事に生きて帰る事だったかもしれないし、ドラッグの禁断症状で駄目だと思いながら注射器を握る青年の姿かもしれない。

果たされなかった約束に忸怩たる思いで、自らの弱さへの許しを求めているのだろうか。

俺の心理もまさにそんな感じだった。

先日の日曜日の強制親孝行により、その日はいきなりチートデーにした。

体重も翌日、72.5kgを叩き出したが、三日間をntc食(納豆、豆腐、チーズ)を貫いたため、70.55kgと3日で2kg減に成功していた。

このまま、このままだと、競馬で自分が本命を打った馬が先頭でゴール前の時のように魂が叫び出す。

幸い、起床時に空腹感はなく、今日だけ、今日一日だけ頑張るんだと自分に言い聞かせていた。

その今日一日だけ頑張るの連続性の先に未来があるんだ。

本日13時からバス停で言う港南車庫の近くの歯科医院で商談があった。

物理的距離はそれほどでもないが、電車とバスで行かなければならず、俺は大事をとって早めに自宅の扉に鍵をかけることにした。

まずは、上大岡に出てバスに乗り換える

地下鉄の吉野町からブルーラインに乗り、地下街経由でバス停に向かった

すると、俺はルートを間違えてしまったことに気付かされた。

上大岡駅の地下にはレストラン街が広がっており、その煌びやかな食品サンプルや、いつも以上に欲望を刺激する肉やカレーの香りは俺の平常心を揺さぶるのに充分だった。

いけないっ!!

早くこの欲望の通りを駆け抜けなければ!

しかし、メンタルと裏腹に肉体は正直だった。

歩速は意に反して遅くなり、目は看板やメニューばかりを追ってしまう。

鼻は思春期の男の子がすれ違う綺麗な娘の残り香を求めるかのように香ばしさを求め、深呼吸してしまう。

くそう、なんて旨そうなんだ

予期せぬ外部からの刺激が、深い眠りについていた俺の食欲を乱暴に叩き起こす

ああ、腹減ったな・・・

孤独のグルメの仕事終わりのようになっている

今の俺の財布にはどれを選択しても大丈夫なくらいのお金は入っている。

最悪「シャキーン」とキラリと光らせたカードを取り出すことだってできる

その気にさえなれば、いつでも俺は誘惑してくるあやつらを胃袋に収めることができるのだ。

駄目だ、駄目。

魂の炎を燃やせ、コスモもビックバンばりに爆発させろ

今だ、今だけ頑張れ

がしかし、ステーキなら大丈夫なんじゃないか?

糖質も少ないし。

自己正当化する「ささやき」が脳内にこだまする。

その瞬間、脳内の映像が尋問室に切り替わる。

「飴村行」というホラー作家がいるのだが、過去に読んだその代表作の「粘膜人間」は衝撃的な小説だった。

その小説で出てくる特別警察の尋問室のイメージが映像となって広がる。

底意地の悪そうな目をした取り調べ官が、警棒を持ち、俺の豊かな腹をそれで突いてくる

「なんだ?この腹は?」

薬物所持が見つかった者のように、俺は言い逃れができず、俯く

「なんだ、この腹はと聞いているんだ、貴様!」

グリグリと腹に突き立てられる警棒に俺は呻き声をあげる

確かに絞っているとは言え、現実に右手を腹部に当てると、「なんだ?この腹は?」と自分でも思わされる。

うっ、駄目だ。

尋問官に詰問されるイメージを思い浮かべ、俺は現実に戻ってきた。

脇目も触れるな、振り返るな。

聖書でロトの妻が悪徳の町から脱出する際に決して振り向いてはならないと言われていたのに振り向いてしまい、塩の柱になってしまった話を思い出す。

俺は下を向き、足早にバスターミナルへ向かった。

そして、いよいよ出口だという時

罠は油断した時にやってくる

目の前はステーキ店だった。

ステーキなら糖質3gぐらいだよ

悪魔が囁く

いや、それは正当化するために自分の都合が良いところを切り取っているだけで、実際はサラダやらスープやらステーキソースや付け合わせを考慮したら20gくらいの糖質はあるはずだ。

ただ、それでもちょっとくらいならいいんじゃないか?

充分に糖質はカットできるし。

思考が欲求に操られている。

もう、薬物中毒者の思考と同じだ。

そうしたい理由、正当化できる材料を探してしまっている。

本能が思考にブレーキをかけ、ジョジョの奇妙な冒険のボスキャラクター「カーズ」のように俺は考えることをやめた。

気がつけば、椅子に座ってメニューを眺めていた。

「母さん、ごめんよ、強い人間のつもりだったけど、俺は弱い人間だったみたいだ」

冒頭の言葉を呟かされる。

せめてもの抵抗とライス抜きでレギュラーステーキを注文した。

待つ間にやってくる、サラダとミネストローネ

美味いっ!

無限列車の煉獄さんのように叫び出したくなる

末期の病人の最期の晩餐かであるようだ。

「美味いなぁ、美味いなぁ」

と兵糧攻めから解放された降伏した籠城兵が最初に口にする食事のように涙目で呟かされる

チーズと納豆と豆腐の単調な味に僅か3日で辟易していたのだ。

サラダのドレッシングが美味くて仕方がない

そして、ジュウジュウと咆哮をあげ、そいつ(ステーキ)はやってきた。

チーズでもない、納豆でもない、豆腐でもない冷たい植物性たんぱく質ではなく、温かい動物性タンパク質の香り

いつでもどこでも手に入るありふれた肉だった。

しかし、手に入らないと知るとこれほどまでにその価値を思い知らされる。

最高の調味料は空腹と我慢かもしれない。

そして付け合わせのフライドポテトがなんとも艶めかしい。

美味いだろうな、あれ

冷凍食品のミックスベジタブルにしか見えないグリンピースと人参も、チーズと納豆と豆腐の水墨画のような色褪せた世界から戻ってきた俺には輝いて見えた。

俺は震える手で、ナイフを掴み肉に刺す。

「とったどー」と脳内で誰かが叫ぶ

そして、糖質の塊っぽさそうなソースが乗ったそれを口に運ぶ

・・・

言葉はいらなかった。

きっと制限がないときであれば何とも思わないステーキだ。

しかし、渇望していた俺にはご馳走だった。

舌の上で、牛が走る

俺の舌の上で肉が弾む

「大地が、大地が弾んでミスターシービーだ」

とか三冠馬の三冠目、菊花賞の実況を思い出す。

そういえば今週菊花賞だったなとか余計な思考も混じる

美味かった。

ただ、俺は判断を保留していた。

そう、付け合わせのフライドポテトとミックスベジタブルだ。

美味そうだ。

魅惑的と言ってもいい。

蠱惑的でもある。

今の俺にはどんな美女よりもこのポテトの方が魅力的だ。

思いのたけをぶつけてフォークを伸ばしたい。

だが、しかしそれをしてしまうと、「ちょっとくらいの糖質なら」にはならない。

踏みとどまれっ!!

鬼滅の刃の竈門炭治郎 の叫び声が聞こえる

俺は映画SAWの主人公たちのように、生き残るために犠牲を払う覚悟を決めて、震える手でそっとつけあわせ達をフォークで皿の隅に追いやった。

まだ引き返せる。

まだ、あれを口にすることはできる

しかし、半沢直樹で大和田常務が土下座をするときのように、プルプルと震えながら俺はそれらをさらに皿の隅へとまとめた。

「いいのかい?本当にそれで」

「それを作った人の気持ちは考えたことがあるかい?」

ポテトフライが涼しげに話かけてくるようだ。

もはや幻覚に近い

くっ!!

それでも、誘惑に2連敗は駄目だ。

最低限の意地は見せるんだっ!!

俺は後ろ髪を思いきり引かれながらも伝票を取った。

「見るんじゃない」

自分に言い聞かせ、つけあわせ達から目を逸らした。

夏の電車で移動中に薄着の女性に性的な視線を送ってバレている野卑たおっさんにならないようにするのと同じような心境だ。

バレている時点で雑魚すぎて、自己肯定感が著しく損なわれる

一矢報いるんだ。

打ち勝て、際限のない欲望に

足るを知れっ!!

なんとか、泥沼から抜け出すと、俺はバスターミナルへと向かった。

でもステーキ美味かった。

やってしまったという後悔と、満足感が交差する。

明日の体重もこれくらいの糖質なら大丈夫だと信じたいが、どうだろうか。

そういえば、話は全然変わるけれども俺は喫茶協同組合に入っており、経営ガイドブックと言う冊子が届いていた。

何気なく中を覗いてみると、なかなかなデーターの数々

まだうちの店はマシな方なんじゃないかと言う気にさせられるが、一番きつい時しか体験していないというのも生き残りさえすればよい経験なのかもしれない。

というのも、うちの飲食店同様のBARなどの形態の場合、市場規模が2019年から2020年にかけて60%減となっている

世帯消費もBARなどの酒代が2019年は年間平均2万円だったが、2020年は1万円の半分になり、2021年は5千円と2019年の4分の1、2022年は盛り返してきたとはいえ9000円

そりゃ飲食店の倒産ラッシュは止まらないよな。

読み進めていくと、経営課題についての記載があり、少子高齢化のため年々客数は減少してくと書いてあった。

そのため新規顧客開拓の検討が必要ですと、当たり前すぎる内容が書いてあり絶句した。

そりゃ、皆検討もしているし、考えてもいるだろうよ。

けど、具体策や事例がなきゃ意味がないよね。

まあ、考えて行動しろという事なんだろうけれども、それでもこんな情報とも言えないような情報が冊子に載って送られてきちゃうんだから、そもそも新規開拓を飲食店はやっていないという証左なのかもしれない。

意識レベルでまだ俺に勝算があるなと思われるのだ。

友人が0スタートで飲食店はじめるとか言われたら全力で止めるけれども。

うちに数字見せてやるから修行に来いと言ってもいいレベル

破綻した給食提供の会社じゃないけれども、飲食店のビジネスモデルも崩壊しているんじゃないかと思うくらい儲からない。

道楽以外で継続できている飲食店経営者は尊敬に値するもんな。

そもそもラッキーなだけなのかもしれないけれども。

ただ、麻雀じゃないが、ラッキーは偶然だけれども、そのラッキーを継続できるのは実力なんだよな。

掴んでも離してしまう人も多々いるのだから。

さて、新規の集客方法の実行を進めないとな

競合しない居酒屋に営業でハシゴをしていきたいと思う。

ついでに考えたのが、店舗のブログの方で地元の飲食店情報をニッチで提供すれば検索数が上がると思うんだよな。

その地元で飲食店を探している人が検索するのだろうから、意外に訴求したい相手に辿り着けるかもしれない。

そんなことを思わされる

それにしても情報発信の重要さは、ご無沙汰していた方から読んだよと連絡がくることだよな。

それでまたきっかけが生まれたりする。

前回書いたネタが刺さった経営者の方がいて、近いうちに会ってこようと思っている

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